今から30数年ほど前のことです。当時、私は国立市に住んでいましたが、一橋大学のキャンパスで初めて太極拳の表演を見ました。
表演された太極拳は簡化24式太極拳。表演者は私の最初の太極拳の師となる、Nさん(現在では有名な老師です)でした。
Nさんは身長163センチの私よりもさらに一回り小柄な体格でしたが、中腰の姿勢でゆっくりゆっくりと動き始めると、体がとても大きく見えました。
そのNさんの太極拳の表演に、私はくぎ付けになりました。それは、これまで見たことのない動きで、まるで、ブルドーザーのようだと感じました。
Nさんは、ゆっくりゆっくり、地面を這うようにして動いていきました。右手が動くとき、同時に左手も動き、まるで両腕がひとつながりのようでした。両腕は、両足の動きとも連動しており、その二つがつながっているようでした。その人間離れした独特の動きは、強烈に私の心の中に焼き付けられました。
その日から私はNさんの弟子になりました。今思えば、とても幸運な時間を体験していたのです。太極拳の基礎を、一人の先生から、ごく頻繁に教わることができたからです。
Nさんは、そのころ、運送屋のアルバイトをしていました。早速、私も同じアルバイトを始めました。仕事中できるだけNさんにくっついて、Nさんのすることを一から十まで真似ました。引越し作業のときの階段の上り下りや、荷物の持ち方が、即、太極拳の練習でした。
太極拳は、わかればわかるほど、魅力が増してくるものです。太極拳練習は単なる肉体訓練ではありません。型のとおり動くことによって体の中には不思議な活力があふれてきます。練習すればするほど、疲れるどころか、「気」が体の中をめぐるのが感じられ、かえって元気になってくるのです。
さあ、あなたも、私、真北と一緒に太極拳を学んでいきませんか?